墨出しマニュアル

現場で使える墨出しマニュアル

墨出し屋が知っておくべき測量の知識 5選


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今回は、より高度な墨を出せる基礎知識について、4回にわたって解説します。

4回目には、斜めの返り墨出しが、できるようになります。

斜めの返り墨を出すだけなら、関数電卓の操作を覚えれば良いだけですが、どんな場面でも対応できる、どんな墨でも出せるようにするには、基本知識が必要となります。

斜めの墨出しでは、もう悩まないということです。

 

今回、第一回は、測量の基礎

第二回は、関数電卓の使い方

第三回は、座標の知識

第四回は、3回分の知識を使って斜めの返り墨出しを行う三つの方法を解説します。

 

墨出しと測量

 

現場でよく『測量屋さん』って呼ばれる事ないですか?

私はよく言われます。

周りの人からすると、トランシット持って、なんか測っている人はみんな測量屋です。

 

いわゆる測量屋と呼ばれる人達は、大きく分けて3業者に分かれます。

 

1,土地家屋調査士

国家資格をもっています。境界の設置では専門職で、他業者が境界を設置するのは法律違反になります。

境界測定から設置、登記まで行います。

土地家屋調査士試験は国家資格のなかでも上から7番目の難しさです。測量の知識だけでなく、法律の知識もかなり学習しないと取れない資格です。

測量屋というより、法律家が近い。作業着を着た法律家なんて言われています。

 

2,測量士測量士補

測量士も国家資格ですが、難易度はかなり易しい。条件が合う学校を卒業で資格がもらえます。もしくは、試験を受けます。

測量士補測量士ともに試験に合格し、登録すると資格をゲットできます。

一般の人が思い描く測量がこの人たちです。

資格は公共の工事をするにあたって必要になるものです。境界などは設置できません。

主に、基準点設置や道路、橋などの測量を担当します。

 

3,墨出し

墨出しは資格などはいりません。だれでも、なれます。

しかし、器械を据えるスピード、正確さは測量業の中では1番です。

また、建築の知識も相当量必要なため、上級職長クラスでは、国家資格があってもいいレベルです。何度も土地家屋調査士測量士とも仕事をしてきましたが、引けをとらないどころか、勝っているところも多いなと感じました。

 

もし、墨出しをしていて、測量方面に興味がでてきたら、測量士補などの資格取得を考えてもいいと思います。

 

墨出しと測量が重なっているところ

 

地縄や境界確認など現場スタート業務がラップしている部分です。

躯体工事に入れば、測量ではなく墨出しに移行します。

ですので知っておくものとしては境界を測り、通り芯の設定までの間となります。

知っておくべきものとして以下の通りになります。

 

1,正の位置

2,測量の座標

3,境界の知識

4,配置図、地積測量図、など敷地を確定する図面

5,トータルステーションで境界を測る

 

1,正の位置

測量では、トータルステーションを使います。

トータルステーションとは、光波測距機とトランシットが合体したものです。

光で距離も測れるし、角度も出せるというものです。

土地家屋調査士も、測量士もトータルステーションを使っています。

トータルステーションの精度はかなり良いです。親墨出しにも使えるレベルといえば、墨出し屋さんには、わかってもらえると思います。

つまり、誤差が1,2ミリ位なのです。

墨出し屋さんもトータルステーションを使えるようになりましょう。

トータルステーションを使うとき癖にしないといけない動作があります。

それが「正の位置」です。

正の位置

常につまみが右にくる状態にします。

この位置で右回りに測量するのが基本です。

墨出しだと別に意識しない点です。親墨出しでも90°がでればOKなので、つまみの位置など気にしないと思いますが、これを見た人は意識して「つまみが右」で操作することを習慣にしてください。角度を出すときも、出来るだけ右まわりで行います。

 

・つまみが右側にある状態が「正の位置」

・測量は基本右回り(時計まわり)で測量する。

 

2,測量の座標

 

つぎは座標を解説します。

小学校で習ったあれです。しかし、注意すべき点があります。

測量の座標は一般の座標とX、Y軸が反対であるということです。

なぜかはわかりません。そう決まっています。

一般座標

上の図は学校で習った座標軸です。上下方向がY、左右がXとなっています。

測量座標はどうかというと、

測量座標

上下方向がX座標、左右方向がY座標となります。

これは注意してください。

JWCADやAUTOCADなどの座標は一般の座標となっているので、トータルステーションの座標を移すときは、逆にする作業が必要となりますので要注意です。

 

座標の位置

プラス、マイナスの位置を覚える。

象限

覚え方として、上はプラス(X軸)、右はプラス(Y軸)と覚えておく。

このプラス、マイナスは地縄、遣り方で必ず使うので、感覚として覚えましょう

 

・測量の座標は上下がX、左右がY

・上がプラス、右がプラス。

 

3,境界の知識

境界の知識を解説します。

 

境界の種類として

官民の境界

民民の境界

この二つがあります。

官民の境界とは、公有地と民間の土地の境界線を規定するものです。登記もされており、信頼できます。

一方、民民の境界はいまいちなものもあります。

民民とは民間と民間の境界ということです。田舎の方だと、立っている木を境界にしたりします。もうだいたいの世界ですね。

 

 

コンクリート

コンクリートでできた境界杭です。穴を掘り、杭を立てて、モルタルで固めるため頑丈で動きません。一番多い境界標です。

 

境界の位置

コンクリート杭で間違いやすいのは、矢印の先端が境界ではないということ。

杭の外面が境界点であるということです。上の図で言うところの赤の点。

初心者は何も言わないと、ほぼ黄色の部分が境界だと思っています。

要注意ポイントです。

 

そのほかには

金属標。これはよく見かけるものです。わかりやすいので間違いはないでしょう。

 

鋲。これも間違いようはないものでしょう。

 

金属標、鋲

 

 

4,配置図、地積測量図、など敷地を確定する図面

墨出し屋が見る図面として以下のものがあります。

地積測量図:登記されている図面。土地の面積、座標が記載されている。この座標は非常に使えます。登記されたもので、正式なものだからです。

 

求積図:土地の面積を測るために作られた図面。面積を計算するには、座標法、三斜法があります。座標法で、描かれている図面は使えます。

しかし、三斜法の図面は、あまり使えません。三角関数の計算を何度も繰り返してやっと座標が出る感じだからです。計算間違いのリスクが高まります。三斜法の図面は、境界の距離をあたるくらいでしか使わないと考えてください。

 

配置図:地縄の前に必ず見る図面です。通り芯が境界からどのくらい距離を取るかが描かれている図面です。この図面をもとに、通り芯を決め、建物の位置を決めるのです。墨出し屋にとっては、一番重要な図面です。

この図面によって通り芯が決まるからです。

 

これらの図面の情報で境界の距離を測ります。

しかし、大半の境界距離はミリ単位では表記されていません。

たとえば、15、834ミリが正規の寸法だとすると

15,83と書かれています。小数点第3位は切り捨てされるのが一般的です。

距離が合わないと悩むことはありません。

隣地境界線、道路境界線などと書かれています。

 

5,トータルステーションで境界を測る

境界同士を「対辺測量」というコマンドで測ります。

直線距離を測るのに適しています。

対辺測量

上記の図のようにトータルステーションがどこにあっても、直線距離が測れます。水平距離で測ってくれます。

わざわざ境界上にトータルステーションをセットしなくても測れるのです。

大変便利な機能なので、使えるようにしてください。

 

まとめ

今回は墨出し屋が知っておくと便利な測量の知識を紹介しました。

このなかでも

・正の位置

・座標。一般座標と、測量座標は違うこと。プラスマイナスの位置関係

必ず身に着けてください。

 

この先で、斜めの墨出しをトータルステーションで出すときに使います。

トータルステーションで斜めを出す事は、三角関数で計算で出すより、はるかに簡単です。しかも間違いにくい。

 

ぜひ覚えておきましょう。