間仕切り墨出し
今回は間仕切り墨出しについて解説します。
間仕切り墨出しは、墨出しの全作業の中で、もっとも間違いが多い作業です。
それはなぜか。
・圧倒的に墨を打つ量が多い。
・寸法が細かい。
・図面が見ずらい。ぱっと見ではわからない図面も多い。
などの理由が挙げられます。
しかし、難しい技術はいりません。
間仕切り墨出しのポイントは、
手順を覚える
知識を覚える
だけです。
そして、間違いを減らす方法を身につける。
これが重要です。
ですので、今回は
1.知識を覚える
2.手順を覚える
3.間違いを防ぐ方法
の順で解説していきます。
間仕切り墨出しの知識
間仕切り墨出しとは、何か、
間仕切り墨出しとは、一言で言うと、軽量鉄骨の位置を出す、という事です。
間仕切り(まじきり)とは、建築物の内部空間を区切るものです。たとえば居間と廊下や浴室と脱衣所のように、建物内部では用途によってさまざまな空間ができますが、これらを区切るのが間仕切りです
一般的には石膏ボードやLGSと呼ばれる軽量鉄骨製の下地材が使われることが多いです。
私達、墨出し屋は、その軽量鉄骨の位置を墨出しするのです。
細かい知識を上げればキリがありません。
私達は内装業者ではないので、そこまで詳しくなる必要はないのです。
ですが、最低限は押さえておきましょう。
間仕切り墨出しは、寸法通り出せば問題ないのです。
細かい収まりなどは、監督や内装業者に任せましょう。
出す墨は?
・壁の位置
・開口の位置
・下がり天井の位置
この3点がメインです。
他にも、カーテンボックスの位置、床暖房の範囲、上がりかまちの位置などもありますが、メインの3点が圧倒的に量があります。
メイン3点を覚えれば、合格点です。
壁
部屋を仕切る間仕切り壁の位置を出します。
壁は、軽量鉄骨を立てて、その上に石膏ボードを貼るのが一般的です。
私達は軽量鉄骨の位置を墨出しします。
軽量鉄骨の事をLGSと呼びます。
LGSにはいくつか種類があります。
その鉄骨の太さによって分けられます。
45.65.75
この3点がほとんどです。
他にも20や100などありますが、時々見る程度でしょう。
45
墨出しではこの45の幅のLGSをよく見ると思います。
主にマンションなどの部屋の間仕切りに使います。
材料に詳しくなる必要はありません。
私達はその幅を覚えて、中心からの振り分け寸法を暗記します。
45ですので2で割ると22.5になります。
たいていの間仕切り図面は軽量芯を載せています。芯を出したら、22・5振り分けをして、LGSの形状を出します。
私達が出す墨で一番多いのが45のLGSです。
65、75
耐火間仕切りや、店舗、工場などでよく使うLGSです。
65は32・5振り分け
75は37.5振り分け
石膏ボード
一番使うものとして12.5のボードがあります。
次に9.5。
ボードの墨を出す事は滅多にありません。しかし、ボードの事を知っておく必要があります。図面によって仕上がり寸法しか載せていないものがあるからです。
例えば、壁際などのLGSを出す際などに多いです。
図面ではこんな風に書かれています。
このまま、通り芯からの寸法を出すと(170)ボードの墨を出す事になってしまいます。現場では軽量の墨を出すのが、当たり前になっているので、その墨にLGSを建ててしまうと、部屋が狭くなってしまいます。
ボードの厚み分を引いた寸法を出さないといけないのです。
図面1であれば、170-12.5(ボードの厚み)=157.5の墨を出さないといけないのです。
ですので、ボードの知識も必要となります。
といっても、パターンは限られています。
1、12.5のボード一枚を貼る
2,12.5と9.5の2枚を貼る
3,12,5と12,5を2枚貼る
4,9.5を1枚貼る
90%以上がこのパターンです。
通常の壁は1枚だけボードを貼ることが多いです。
2枚貼る壁は、65や75の大きいLGSを使う壁、PSなどの騒音が出るところの壁などが考えられます。
下がり天井の場合は9・5のボードがほとんどです。
ボードの知識はこのくらいで十分です。
開口の知識
これは、かなり難しい。
突き詰めると、家具図やSD図を見て開口をださないといけない。
しかし、私達墨出し屋は、間仕切り墨出しだけするわけでもないので、図面通りに墨を出しましょう。
昔は、どさっと家具図やSD図を渡されて、開口だしておいてを言われた事もありました。スピードがかなり落ちたのを覚えています。じっくり図面を読み込まないとならないからです。
こうなると、数はこなせません。
家具図やSD図の読み方などは、覚えておいて損はないのですが、無理する必要もありません。
9割以上の現場では、図面に家具図やSD図の情報が反映されたものを用意してくれるはずです。
パターン1
開口1の図面を見てください。
これが一番オーソドックスなパターンです。
青の線から600。そこからワイド800の開口です。
このまま墨出しするとまたもや、仕上げの墨を出す事になります。
開口には枠が付きます。
その枠分引いた墨がLGSの止まりの寸法になります。
この図面には枠の寸法を載せましたが、大抵の図面には記載がありません。
一番多い寸法は25ですが、全部そうとは限りません。枠の寸法は必ず聞いてください。
この図面ですと青い通り芯から575。そこに墨を打つ。そこから800+25+25=850となりますので先ほど打った墨から850測り墨打ちする。
赤の寸法線が、実際に墨出しする寸法になります。
パターン2
このパターンも多い。
青字の寸法を見て下さい。
間仕切り芯から60と書いてある。
では先ほどのように60から枠の25を引けばいいのかというと、そうではありません。枠とLGSの間に12.5のボードが挟まっています。
これも、引かないといけない。それで引いてみるとLGSの面の寸法と同じになります。
60-25-12.5=22.5
ですので、図面左側の止まりの墨はもういらない事になります。(既に出ているから)
右側の止まりだけをだせばOKということです。
ですので
60+ワイド800+枠25=885
とするのが、一番わかりやすいと思います。
墨出しする際は、間仕切り芯からのスケールを出します。間違いないように。面からスケールを出したりしないように気をつけましょう。
記号(能書き)を書くとこんな感じです。イメージつかめましたか?
パターン3
このパターンは、リネン庫やクローゼットなどで多く見かけます。
今までのパターンだと、通り芯か間仕切り芯から開口寸法を追っかけているものでしたが、パターン3は少し違います。
有効寸法=開口というケース。
図面だとこんな感じで描かれています。
だから開口を出す時は、LGS面からスケールを出します。
芯からと間違えないように。パターン2は間仕切り芯からでしたが、パターン3は面からです。図面をよく見ましょう。
パターン4
パターン4は結論から言うと開口の墨を出す必要はないケースです。
図面ではこんな表記をしています。
パターン5
LGSがダブルの壁のパターンです。
引き戸などにこのパターンは多いと思います。
基本はパターン1、2と同じです。応用型と思ってください。
図面で言うとこんな形です。
LGSの止まりが複数ある形状です。
パターン6
これは開口ではないのですが、記載しておきます。
袖壁の止まりです。
間仕切り芯、通り芯から仕上がりの寸法をおさえてあります。
そこからボード分の12.5を引いてLGSの止まりを出します。
下り天井の知識
最後に下り天井の知識を解説します。
下り天井とは何か。
この写真を見てください。
この様に天井に段差ができているものを言います。
配管を隠すためや、おしゃれに見せるためなどの効果があります。
さて、この下り天井に位置を床に出すのですが、注意点があります。
天井が低い方に引っ込める。
なんのことだがかわかりませんね。
しかし、この文言は暗記です。
図面で解説します。
わかったでしょうか。
大抵は、天井が低い側は図面を見たらすぐにわかります。
おしゃれマンションなどで時々分かりずらい時があります。
その時はこの文言です。
天井が低い方に引っ込める
また、下り天井下地の位置は、幅で出す必要はありません。(出してもいいですけど、出さなくても大丈夫)
その他の知識
・芯ズレ
これはボード2枚貼りと1枚貼りの境で起きる現象です。
仕上げ面は同じなため、LGSの位置が引っ込んだり、出たりするのです。
うっかりすると、芯振りしてしまうので、要注意なポイントです。
図面にあらかじめ色付けしておくなどの対策が必要です。
間仕切り墨出しの手順
次は手順の説明です。
間仕切りの墨出しにはルールが一つあります。
それは、「片追い」というものです。
どうゆうことかというと、寸法を追っかけるの通り芯を一つに決める事。
X1が玄関側の基準、X2がベランダ側の基準とします。
その時、X1から順に間仕切り壁を墨出ししていきます。そう決めたら、X2からは寸法を追っかけないのです。親墨のスパンがピッタリとは限らないための処置です。
こっちの壁はX1から、こっちはX2からと追っかけた結果、部屋が五ミリ小さくなってしまった・・・ということを防ぐためです。
それさえ守れば、他はどう出しても大丈夫です。
しかし、やり易い方法もありますので、今回はそれに沿って解説します。
① 廊下の壁を出す。
部屋をズドンと2分するメインの壁を先に出します。
廊下と部屋を分ける壁であることが多いのですが、もちろん違うことも多いです。
しかし、まずは、長い壁を探して出すことが、一番です。
これを間違えると厄介なので、必ず逆チェックしましょう
② 各壁を出す
細かい壁を出していきます。
慣れないうちはまず芯墨だけを先行して出すことをおすすめします。
なぜなら芯だけなら1本の墨なので間違った時に修正が楽だからです。
これをLGSの墨、3本打ってしまうと、間違った時、消すのが大変です。
最後の間仕切り芯を出したら、必ず逆の通り芯からチェックします。
あと、壁側のふかしの壁の出し忘れに気をつけましょう。
忘れやすいポイントです。
③ 下り天井を出す
下り天井の墨を出します。
④ 開口の墨を出す。
開口の墨をチェックしながら出していきます。
その際記号(能書き)も、ペイントマーカーで書いていきましょう。
⑤ 出し忘れがないか、部屋全体を見る。
特に開口、下り天井下地の墨、壁ふかしの墨の出し忘れが多いので、その辺を重点的に見ていきます。
大丈夫そうでしたら1部屋終了です。
かかる時間ですが、大きさによっても違いますし、形状の複雑さによっても
大きく違います。また事前準備を入念にしていれば時間短縮できます。
ファミリータイプの間仕切りですと、1部屋1時間から1時間半位を目処にしてもいいでしょう。
ワンルームだと40分から1時間くらいでしょうか。
あくまで目安です。
間違いを防ぐ方法
最後に間違いを防ぐ方法です。
なぜ間仕切り墨出しは間違いやすいのか?
原因として
1、単純に量が多い
2、寸法が細かい
3、図面が見ずらい
大きくわけてこの3点が挙げられます。
これらの原因からヒューマンエラーを引き起こし、間違ったまま納品することになります。
1、の量が多いのは致し方ないことです。
ですので2、3を改善します。
事前準備が大事です。
間仕切り図面には、LGSの他にもたくさんの情報が載っています。
それらは、間仕切り墨出しの際はノイズとなります。
すぐに寸法が読み取れない原因の一つです。
・その対策として図面上のLGSに色を付けていきます。
蛍光ペンなどが適しているでしょう。
その際、芯ずれしているところ、寸法が分かりづらいところも見ていきます。
・次に、計算をします。
通り芯から、一発で追えることが少ないのが間仕切り図面です。
現場で計算機をなるべく使わないようにするため、あらかじめ計算していきます。
・事前準備した図面を持って現場で墨出しを開始します。
手順は、先ほど述べた通りです。
ここで大事なチェック方法を解説します。
「逆チェック」です。
開口がわかりやすいので、開口の逆チェックを説明します。
要するに、反対から確認するということ。
これは、単純ですが、効果抜群です。
そして、間違っていないという確信が持てます。
1、壁の逆チェック
順番に追っていき、最後にバルコニー側の通り芯からの寸法でチェック。
2、開口の逆チェック
これは先ほどの通り。
この2つだけで、重要な箇所は間違いをすることは無くなります。
問題は逆チェックできないところです。
ここが間違い多発地帯です。
今までは、最後にチェックするというやり方をしていたのですが、最後までいくと次の部屋に、気持ちが行ってしまい、「大丈夫だろう」と妥協しがちです。私がそうでした。
最後にまとめてというのをやめて、墨を出した都度、チェックするようにしました。
そうすると、妥協しなくなり、間違いがグンと減りました。
逆チェックできるところは逆チェックする。
できないところは、声出し、指差し確認する。確認したぞとういう記憶を残しておく。
確認をすることが大事なので、ゼロチェックで結構です。サッとスケールを出す。都度確認していく。
その他の確認方法は、墨出しの基本ですが記載します。
・墨を重ねて打つ際は、伸ばして墨を打つ。誤差や、間違いがあるとバチリます。
間違いに気付けます。
・90度になっているか確認。目視する。違和感があったらチェック!!
まとめ
間仕切りは図面さえ読めれば、誰でも出せる墨です。
でも、間違いは圧倒的NO1作業です。
墨を打つ量も多いため、確認しきれないのでしょう。
もしくは大丈夫だ、俺は間違いないという過信からでしょうか。
人間は、時に信じられないようなミスをします。
単純作業でさえミスするのですから、間仕切りの墨出しでミスしても仕方ない様にも感じます。しかし、墨出し屋の仕事は常に100点、パーフェクトを求められ、仮に100点を取っても、当たり前としか捉えられません。
なのに、間違えると大変。
やってられないと思った時がありました。
おそらく、将来的には、ロボットが間仕切り墨出しする様になるでしょう。
寸法さえあればできる仕事は、墨出しロボットが代行できます。
それまでは、きっちり確認して、やっていくしかないでしょう。
とにかく都度、確認。逆チェック。
確認、確認、事前準備、確認です。
間仕切り墨出しはこれで最低限の知識です。
突き詰めるともっと奥が深いです。
常に学習していきましょう。
大丈夫そうですか?
お疲れ様でした。