階段墨出し
階段墨出し
今回は階段の墨出しについて解説していきます。
階段の墨出しは初心者には難しいと思います。
しかし、階段の墨出しは、他業者にはほぼ出せない墨であるため、階段がある現場は必ず墨出しの依頼があります。(RC造のみ)
一日も早くマスターしましょう。経験を沢山積めば難しく感じなくなります。
苦手意識を持ってしまうと、なかなか覚えられなくなります。10年やっても階段の墨出しができない人もいました。親墨出しなどと違って、時間に追われることもないと思いますので、じっくりと腰をすえてやってみてください。
階段の墨出しのは何のためにだすのか?
階段の墨出しは、階段の仕上げ面を出します。左官工事で仕上げて、あとは長尺シートをはって仕上がりということが最近は多い気がします。時々、タイルを張る階段もあります。タイルの厚み分を引いて墨出しをしないといけないのですが、基本がわかっていれば、特に問題ないです。
上級者の墨出しである?
一昔前は、階段の墨出しができて一人前なんて言われていました。最近は、あまりそんなことも聞きませんが・・・。といっても、難しく感じる必要はありません。階段の墨出しはこれといった特殊な技術は必要ありません。手順を覚えればいいだけです。親墨出しや、地縄なんかに比べて、神経を使うことも、あまりありません。間違える要素が少ない作業ですね。
でも、油断は禁物です。
チェックポイントは
・平行
・レベルの精度
です。これさえ間違いなければ、大丈夫でしょう。
あと、もう一点
ハツリがでるのは極力さけてください。あまりに躯体が悪い場合は、仕方ないのですが、現場と相談して、ハツリが出そうなときは調整して、ハツリを回避すると考えてください。
使用道具
レーザー
スケール
下げ振り
手順
【重要】ヒアリングすること
仕上がり、塗代(ぬりしろ)、階高、蹴込(けこみ)
この4点が事前に取得するべき情報です。図面から読み込めるものもあります。
しかし、確認の意味でも現場監督に聞くのがベストです。
階高と段数で一段の高さをだす。
では、階段の墨出しを始めましょう。
まず、階高を調べでおきましょう。今回は2階~3階の階段と仮定します。
ここでは2910の階高だとします。
その後、2階の階段フロアーの仕上がり、3階の階段フロアーの仕上がりを監督に確認してください。ここではSL±0を仕上がりにします。
そして、塗代(ぬりしろ)を聞きます。躯体からいくつの厚みでモルタルを塗るのか?ということです。20~30くらいが多いと思います。
図面から蹴込(けこみ)寸法を確認してください。これも、20~30が一番多い寸法です。
ここまでの情報は仕入れましたか?
できましたら、階高(仕上がり~仕上がり)÷段数の計算をして、一段の高さ(蹴上)をだします。今回は仕上がりはSL±0~SL±0ですので階高は2910。14段の階段だとして
2910÷14=207.857… となります。
1,レベルをまわす
2階SL1メートル、3階SL1メートルのレベル墨を出します。階段の作業時には、仕上げ墨出しが終わっている頃なので簡単に階段室に移せるはずです。
そして、踊り場にもレベル墨を出します。
2SL2500返りみたいな、基準レベルの返り墨でも構いません。しかし、可能であれば、踊り場の仕上げ墨の500とか、1メートル返りを出すと後で楽です。
図3を参照
今回はこの方法で墨出しします。
1段の高さ(207.857…)×7段≒1455 1455+500上がり=1955
上の式で踊り場の仕上がりのレベルが決まります。2SL+1455が仕上がりの高さ。
それから500上がりは1955です。
あらかじめ墨打ちした2SL1000のレベル墨から955を上部にスケールで測り上げます。ポイントを取って、そこにレーザーで踊り場仕上がり500返りの墨をまわしていきます。
2、段鼻をだす
レベルを出したら、次は縦墨です。
段鼻を出します。段鼻とは、段の先端の事を指します。今回は塗り代30ミリですので、階段躯体から30ミリのところに縦墨を出します。
この時、躯体の平行を確認します。躯体が、平行なら問題無し、しかし、バチっていたら、階段室側に出ている方の躯体から30ミリを測ります。
平行を測るには、親墨にレーザーを据えます。
ポイントを取ったら、踊り場の高さまで墨を打ちます。
打ったら平行に墨を返します。
今回は踏面は250の幅ですので、
250×6という計算をします。
=1500
スケールで1500返します。1本目の縦墨を踊り場の高さまで伸ばしたのは、このためです。
2本の縦墨を出したら、次の作業に移ります。
3、ポイントをだす
レベル、段鼻の縦墨を出しました。ここから、ポイントを作成していきます。斜めに打つ墨のポイントです。
縦墨上で一段目の踏面のレベルを出します。
今回は1段207.857…なので、先ほど出した、2SL1メーターから、スケールでポイントを付けます。
そして、もう一段上の踏面のレベルも出します。このレベルは縦墨上ではなく、蹴込寸法分、離した場所にポイントを取ります。言葉では非常にわかりずらいので、図を参照してください。この図で書いてある赤十字のポイントのことです。
1ポイント
一段目の踏面(仕上げ)と段鼻縦墨の交点。
2ポイント
2段目踏面(仕上げ)と段鼻より30左側で交点を作る。
この30は蹴込寸法と同じ寸法を取ります。
このポイントを上り始め側、踊り場側で作ります。
4,計算をする
割り付けるための計算をします。
関数電卓を用意します。
やり方は様々ありますが、1番分かりやすい方法を解説します。この方法が簡単、かつ間違いずらい計算方法です。
三角形の斜辺を求める。
今回は踏面 250 蹴上(高さ) 207.857...
三角形の底辺と高さがわかっています。
斜辺を出すには、三角関数を使うのですが、関数電卓を使うと一瞬で答えが出ます。
POL(一段の幅、一段の高さ)
(250. 207.837...)
これで、階段一段の斜辺の距離が求める事ができます。その斜辺の距離は自動的に、記録されます。この後の累計寸法を出すのに役立ちます。
距離を求めたら、あとは、その数字を足していく、累計していくのです。
その際、スケールに印をつけていきます。割り付けの時使うためです。
5,スケールに印をつける
関数電卓で先程求めた数値を呼び出します。(ALPHA→X)
まず、その数値をスケールに記録します。
次にアンサーボタンを押し、+ボタンを押し、(ALPHA→X)のボタンを押します。
イコール🟰を押すと、累計した寸法が、求められます。
あとは、イコール🟰ボタンを押していけば、累計されていきます。
この数値を、記録すればいいのです。
小数点は、0.5ミリまでを記録します。あまりに細かい数字は意味ないので、四捨五入します。
今回であれば、6回繰り返せば計算は終了です。
計算でだした数値をスケールに記録して、次の作業にかかります。
6,距離の確認
階段の登り始めと終わりに作ったポイントを確認します。スケールに累計寸法が印であるので、合うかどうか確認。レベルと縦墨が間違えてなければ、合うはずです。5ミリ以上違う時は、何か問題ありです。レベルが違う、縦墨が曲がっている、計算が違う。この辺りが、一番間違いやすいので確認しましょう。
7,斜めの墨をうつ
確認が済んだら墨を打ちます。
8,割り付ける
打った墨上にスケールを当てて、割り付けポイントを交点にしていきます。
スケールがずれないようしっかりと押さえます。
9,墨打ち
あとは墨を打っていきます。
レベル墨、斜めの墨ともに、伸ばすことになるのでポイントから墨がずれないように気をつけます。少しずれると大きな誤差になる可能性があるからです。
これで、階段の墨出しは終了です。解説では片面だけで解説しましたが、実際は2面だします。あと踊り場までの解説でしたが、本番では、折り返して、踊り場から3SLまで、同じことを繰り返します。
時間
階段の墨出しは段取り8割です。レベル、段鼻だし、計算、割り付けポイントの算出
をスムーズに進めることで簡単になります。
30分から40分で墨打ちまで終えることが可能です。でも計算と斜めの距離があわないと確認で時間はかかります。レベルと段鼻出しが最重要ポイントです。
まとめ
難しいと感じたでしょうか?
階段の墨出しは、技術はあまり必要ありません。やや難しいのは、ポイント、割り付け後の墨打ちぐらいです。これも慣れれば上手くなります。
階段の墨出しは手順がすべてなので、この際覚えてしまいましょう。
今回が基本の型になります。あとは応用していけば、どんな階段の墨出しもできるでしょう。
手順おさらい
1,仕上げ、塗代をヒアリングする
2,図面から階高、蹴込寸法、踏面の寸法を読み取る
3,三角形をだし、斜め距離を計算しておく
4,斜めの距離の累計寸法をスケールに印を付ける
5,レベルをだす
6,段鼻をだす
7,ポイントを作る
8,ポイント~ポイント間の距離が誤差がないか確認する
9,斜めの墨を打ち、割り付ける
10, 墨を打つ