墨出しマニュアル

現場で使える墨出しマニュアル

独立までのロードマップ

ロードマップ


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今回は、墨出し職人になるために就職した初心者から独立するまでに必要なスキルや、スキル習得にかかる時間などのロードマップを解説します。私自身の経験を含め、先輩や後輩、協力業者の職人たちの観察結果も考慮しました。

  • どんな人が見るべきか

・全くの墨出し未経験で何から始めていいかわからない、どんな努力をすればいいか分からない人

・これから墨出しを始めるが、どんな感じでキャリアを形成していくか見当もつかない人

・墨出しの仕事をしているが、自分が今どれだけ成長しているかがわからない人

・最短で墨出し屋として独立したい人

  • 時間はどれくらいかかるのか?

時間はざっくりと6年~10年と考えています。

平均的には10年前後が一番多い気がします。私が一人親方になるのには6年かかりました。周りからは「まだ早い」という声が多かったので、業界では早い方だったのかもしれません。

実際には少し早かった気がします。会社を立ち上げたのは墨出しを始めて12年目でした。この頃には自信もついてきた記憶があります。独立の際に融資を受ける際には、10年以上のキャリアがあるということがかなり有利に働きます。問題なく満額の融資を受けることができました。

  • 独立以外の道 社員として経験を積む。幹部として経営陣になる

独立して墨出しの会社を立ち上げる以外にも、会社に残る選択肢があります。会社に残れば、独立するより安定しているというメリットがあります。一方、独立すると営業活動や資金繰り、求人募集などの苦労がありますが、成功すれば収入が増える可能性があります。ただし、社員の何倍もの仕事量が必要となります。職人タイプの人は、墨出しに専念して技を極めたいと考えるかもしれません。その場合、社員として残ることが適しているでしょう。また、幹部として会社に残り、活躍することもできます。

  • いづれにしても職長として一人前になることが必要

いづれの道に進むにしろ、職長として経験を積み、どんな現場でも対応できる職人にならないといけません。

段階として以下の段階に分かれると考えています。

初心者→中級者→上級者→上級職長→独立という段階を踏んでいきます。それでは各パートにて、かかる時間の目安、どんなスキルをマスターすればいいのかを解説します。

初心者ステージ

初心者

初心者は建築現場にも入るのが初めての全くの未経験を想定しています。

中級者になるまでにはおよそ1年半~3年かかります。平均的にはこのくらいの期間が必要です。この期間は、いわゆる「手元」と呼ばれるものです。仕事内容があまり面白くないかもしれません。そして、この段階での離脱率は非常に高いです。ほとんどの人がこの時期に離職します。

職長がなにをやっているのかも、よくわからない…。来る日も来る日もただポイントをおさえるだけ。スケールの100に、ポイント付けるだけ・・・。そんな日々かもしれません。仕事をただこなしているだけの日々になるのも仕方ない気もしますが、墨出し屋さんは5~10人くらいの小さい会社が多いので、なかなか研修期間も、設けられない会社がほとんどです。現場で覚えてください、というスタンスだと思います。

 

しかし、他業種と違って、現場ではなかなか覚えられないのが現状です。墨出し屋の特徴として、毎日違う現場に行き、毎日違う作業をする。これが、初心者が仕事を覚える妨げになっています。やはり仕事は毎日同じ作業をする中で覚えていくものです。

 

上司にあたる職人も、自分がどうやって成長したかは感覚的には理解していますが、それをはっきりと言語化することができません。墨出しの業務は幅広いため、体系化されていません。この作業は墨出し全体の業務の中で、難易度や重要度、習得すべきタイミングなどを教えられる人はほとんどいません。

しかし、初心者期間は頑張るべき時期です。ここでの努力が多いほど、中級者になるまでの時間が短縮されます。

中級者以上になるには、ある程度の現場経験が必要であるため、時間がかかります。

初心者期間を有効に活用し、総合的な時間の短縮を目指しましょう。

大変ですが、現場での空き時間や休憩時間、帰宅後などを利用して、この後説明する基本動作、言語、計算などを勉強しましょう。今の時代、こんなことを言うとブラックといわれそうですが、別にやらなくてもいずれは覚えます。ただ、覚えにくい仕事のため、時間がかかります。

独立を目指す人は、独立までのトータル時間を一番短縮できるステージなので頑張りましょう。鬼滅の刃だと、うろこだきさんとの山での修行です。ドラゴンボールだと亀仙人の家で悟空とクリリンが修行した辺りでしょう。

ここを頑張らないと、鬼は倒せないし、ピッコロ大魔王にも勝てません。

 

初心者や未経験者がやるべきことは以下の5点です。最後に「現場に慣れる」を追加しました。毎日仕事に出ていれば、自然に慣れていくでしょう。

ここでは何を学ぶべきかだけ説明します。この項目については別の機会で解説したいと思います。

1、墨出しの意味を知る。

墨出しとは

墨出しとは、2点のポイントを結んで、糸を弾くことによって真っ直ぐな線を引く事です。

この線によって建物の位置をだしていきます。

墨を出すのは墨出し屋だけではありません。設備系、電気系、躯体業者、仕上げ、内装業者などほとんどの職種で墨は出します。

では墨出し屋はどんな墨をだすのか?

メインは基準墨を出すことです。

共通言語

私達は現場に共通する基準墨を出すのです。

墨を言葉だと考えてみましょう。

色々な国の言語を話す人たちが現場にはいます。各々がかってな工事をしていたら、めちゃくちゃな建物が完成します。そこで皆に伝わる言語が必要となります。現在なら英語です。

皆が英語を話すことで意思疎通が可能になります。

基準墨は英語みたいなものです。

通り芯から何ミリに柱が建つ、壁が建つといえば、建設現場にいる職人には確実に伝わります。

ほとんどの図面が通り芯からの寸法を載せています。

皆の共通言語である基準墨を出すのが私達墨出し屋の仕事なのです。

もちろんその他の墨も出していきます。子墨、間仕切り墨、レベル墨など様々ありますが、一番気を使い、精度にもこだわるのは基準墨なのです。

ですので、墨出し屋にとって、墨出しといえば、基準墨のこと。

墨出しとは、建物を設計図通りに作るための共通言語である通り芯、基準を出す事。

その意識は常にもっておいてください。どの作業を優先にやるかを判断するときに使います。

次工程がつまっているときは例外ですが、だれでもだせる墨は後まわし、墨出し屋にしかだせない基準墨がまず先に出すべき墨と判断します。

 

2、言語をマスターする

建設用語のマスター

次に、建設現場でよく使う言葉を覚えます。

受験勉強みたいに、詰め込むのではなく、仕事でわからない単語がでたら、その都度調べるようにします。ネットで調べればOKです。建築用語集といった本もあるのですが、ネットの方が便利です。

初心者ステージのころだけでいいので、それをメモしておきましょう。書くことで記憶に残りやすいのは、証明されています。

用語ではないのですが、建設独特のものとして、長さの単位はすべてミリで、表します。

10センチは100。1メートルは1000。

5メートル30センチ5ミリ→5305。

最初は戸惑うと思います。しかし、慣れてきます。そのうち、ミリでないとピンとこなくなります。

 

3、どんな作業にどんな墨がいるのか覚える

各作業ごとに出す墨もすこしずつ違ってきます。

どんな墨が必要なのか

各作業ごとに出す墨もすこしずつ違ってきます。

 

1,地縄、遣り方

必要な墨

道路に逃げ墨

敷地内に木杭で通り芯を出す。

建物の位置を出す。

基準レベルを電柱など動かないところに設定する。

 

2,杭芯、山留位置出し

セパで杭の芯を出す。

 

3,捨コン墨出し、耐圧墨出し

通り芯を出す。

子墨を全部だす。梁、柱、基礎、人通口、通水菅の位置など。

基準レベルを矢板に回す。

 

4,親墨出し

通り芯の返り墨を全部だす。

 

5、仕上げ墨出し

レベル墨

縦墨 サッシ周り、タイル面などに必要

 

6、外部墨出し

レベル墨

縦墨、タイル仕上げであれば、一面に1本の縦墨が必要

 

7、間仕切り墨出し

LGSを出していきます。いわゆる下地というものです。

間仕切り墨出しは主に45、65、75などのスタッド、つまり軽量鉄骨の位置を出します。

その他にも、開口の位置、下がり天井の位置なども出す事が多いです。

非常に出す墨が多く、寸法も細かいため、一番間違えやすい作業です。

 

この他にも、階段の墨、ハツリ墨、鉄骨のアンカー芯墨などもあります。

 

4、基本動作のマスター

訓練

ここからはいよいよ実践となります。

基礎中の基礎の動きをマスターしてください。これは、訓練してなるべく早めにマスターします。

しかし、言葉ではなかなかわかりずらいので、動画などで確認してください。

基本動作ですので、日々の業務の中で、先輩の動きなどを参考にしてください。

 

1,ポイントを取る

通常ポイントと親墨出しでのポイントと2種類あります。

通常は、真っすぐ濃くポイントを付けます。

親墨出しの時は、小さい点でポイントを付けます。

 

2,スケールを使う

墨出し屋は基本的には100を使います。なぜなら、ゼロだと1,2ミリほど誤差がでるからです。しかし、さほど精度がいらない作業の場合100の間違いを防ぐためゼロも使うことがあります。スケールは一番の商売道具なので、扱いには慣れてください。

 

3,下げ振り

下げ振りの用途として2種類あります。

目線より下のポイントを目線、もしくはその上まで上げるときに使います。

外部の墨出しが代表例です。

もう一点は、段差などでの使用です。ポイントを下に下げる時に使います。

 

4,墨を打つ、ポイントを押さえる。

一番の基本となる動作です。

ポイントを押さえる方が、多いと思います。

よく見て、ポイントをずらさないようにしましょう。ずらした場合はすぐに報告することをこころがけてください。

 

5、器械をマスターする

 

器械をマスターする

オートレベル

トランシット

この2つをマスターしてください。

器械に共通している、動作として水平にする、気泡を真ん中に持ってくるという作業があります。

ゆっくりやればだれでもできるものですが、私達は一瞬で気泡を合わせなくてはいけません。

そのため、気泡を合わせるときは、初めから3本の指で合わせる練習をしてください。

 

もう一つの共通点として、ピントを合わせる動作があります。

これもはじめのうちはなかなか合わないものです。

忙しい現場では、焦りでなかなかピントを合わせることができないかもしれません。

一旦、帰宅してゆっくりと研究するのがいいと思います。どこまでつまみを回せば、このくらいの距離が良く見えるなと、一回感覚をつかむ必要があります。

器械は練習すればするほど、上手くなりますので頑張りましょう。

 

オートレベル

レベルは三脚に乗せて、水平を合わせるだけではなく、脚の高さを調整しながら、一点に直で据えれるようになってください。現場でSL1メーターの墨に直接据える練習をしてください。

1分から3分程度で据えられたら、初心者卒業です。

トランシット

トランシットはレベルに比べて手順が多いのですが、これも1~3分でポイントに据えられるようになれば、初心者卒業です。主に親墨出しで使うので、スピードは大事です。器械が遅いと、作業がストップしてしまい、8時をすぎて、材料の山のなかで墨出しすることになってしまいます

 

中級者ステージ

80点

ようやく長い修行時代をクリアしました。

ここまで来ると、会社では、なくてはならない存在でしょう。

一通りの作業もできますので、新たな新人を連れて職長として現場デビューする人もいると思います。

しかし、迷いが出るのもこの時期です。

基本動作は身につけた、基本的な墨出しはできる…。

あとは経験を積むだけかな。などと考えます。人によっては作業のスピードUPに磨きをかけたり、できるだけ誤差が出ないように技術を極めたりしていきます。

それはそれで職人の本来の姿だと思います。しかし、独立を目指すのなら、全体的に網羅する必要があります。

勉強で言うなら。国語は80点取れるようになった。さらに90点、95点、96点…。と100点を目指す人が職人タイプ。

経験がある人もいると思いますが、80点をとる努力より、90点、95点をとっていくのは時間もかかるし、更なる鍛錬も必要です。

独立を目指す人は国語の次に数学で80点を目指す。そして社会でも80点、理科でも80点と目指す。

中級者ステージは穴を潰すステージと考えていいでしょう。

期間として2年から3年でしょうか。職長としも経験を積んでいけばなお良いでしょう。上級ステージで飛躍できます。現場の指揮をとり始める時期になりますので、楽しい時期とも言えます。

中級者は少し高度な知識を獲得します。以下5点を意識してみてください。

 

1、各作業の注意点を知っている

例えば、親墨出しであれば、夏場と冬場では距離が違ってくることとか、8時以降は作業しづらくなる事などが頭に入っている状態です。

 

2、地縄ができる

地縄は現場ごとに最初に一回あるだけなので、なかなか覚える機会がありません。

しかし、ここで間違えるとすべてがおかしくなるので大変重要な作業となります。

時間はかかりますが、経験を積みましょう。

 

3、光波が使える

光波を使いこなせるようになりましょう。

光波を使いこなすと、なにを頼まれて怖くありません。

 

4、座標を使った墨出しができる

光波を使える事が前提になります。座標での墨出しを使えると、正直、出せない墨はなくなります。

建物の実測などもお手の物になってきます。

その座標を光波から取り出し、CADで図面化までできるようになれば、日本でも上位の墨出し屋でしょう。

 

5,斜めの墨を出せる

斜めがある現場で斜めの返り墨をだせるようになりましょう。

関数電卓を使って計算するのが、一昔前の計算方法でしたが、計算間違えも多く見てきたので、

斜めがあるとわかっているときは、事前にCADで計算しておきましょう。確実だし、スピードも速いです。準備できない時は、光波を使いましょう。光波もないときに、関数電卓を使うようにしましょう。

 

上級者ステージ、上級職長ステージ

頂上

いよいよ上級者となりました。ここからは、現場でスムーズに墨出ししていくことを目標にしていきます。職長として、どんどん経験を積んでいきます。ここからはただ墨出しするだけではいけません。

まずは時間配分を考えましょう。作業内容を聞いた時点で、この作業は何時頃終了するか、考えます。

今日中に終わる仕事なのか、終わらなければ、どうすればいいか、応援を頼むかなどを判断します。

その上で、どうゆうやり方が一番間違いがない作業ができるかを考えます。手元の力量なども考慮します。その他にも図面の見やすさ、気候、特に夏場は作業が伸びにくことなども考えていきます。

その判断を毎日していきましょう。最初のうちは、予想が外れることも多いと思いますが、経験を積むにつれ精度が上がっていきます。でも、しっかりと意識しないといけません。必ず時間配分は意識すること。筋トレと同じで鍛える部分を意識しないと、強くなりません。

 

以下の項目がマスターすべきものです。

  • 間違えない方法の確立

いかに間違えないように墨出しするかは、事前準備にかかっています。

例えば、

・地縄や杭芯だしの際はあらかじめCADで座標を拾っておく。

・間仕切り墨出しや捨コンの墨出しであれば、図面を先に入手して、落ち着いた環境で計算や、わかりずらいところなどを色分けし、作業しやすくしておく。

など、現場で考える事を極力さけます。

現場は暗い、暑い、寒いなど落ち着いて考える事が難しい状況が多いです。

その中で初見で図面を見ることは、間違えるリスクが格段に上がることを理解しておきましょう。

 

  • 確認力を高める

上級者ステージにいる職人は各作業の急所はわかっていると思います。

どこをチェックしながら、作業を進めれば間違いが防げるかリスト化してください。

例えば、仕上げ墨出しでレベル墨を出すとき、スラブをあたってみて、大きな間違いを防ぐ。

親墨出しの一発目での長手を出す際は、型枠からあたってみて、大きな間違いはないか、平行かなどざっくり確認しておく。

間仕切りで開口を出した際は、必ず逆からの寸法も当たってみる

など、これまでの経験からある程度の確認方法はわかっていると思います。

あとは妥協せず、実行できるか。実行できるのが上級者です。

 

  • 時間配分ができる。

作業内容を聞いてすぐにどのくらいで終わるか、それとも終わらないかなどすぐ判断できるようにします。そのうえで、次回の予定をいれるのか、今日中の作業なら、応援を呼ぶのか、この作業は今日中にはやれないと現場サイドに伝えるのかなども判断できるようにします。

メンバーの力量などもわかっている状態なので、今日は大変な作業なので、ベテラン職人を派遣してくれなどと会社側にも要求できるようになってます。

そのうえで、余裕を持たす時間配分にしましょう。17時に終了なら、16時に終わるように算段します。突発的な作業や、確認の時間を確保するためです。

なにもなければ、早く帰って良しです。上級者になると残業はほとんどありません。

  • 今後の現場の状況を考えて、予定を組み立てる、逃げ墨などの設置をする

先の工程を考えて、予定を現場サイドに伝えます。

また先の作業を考えて、逃げの墨、座標などを設置しておきます。

最初の方は無駄になってもいいのでどんどん逃げておきましょう。

そのうち、どれが本当に必要なのかわかってきます。

  • 円滑なコミュニケーション、監督、他業者の職人

元請の社員、所長などと円滑にコミュニケーションができます。

他業者ともコミュニケーションをとり、どの墨が欲しいのか聞くことができます。

 

一昔前の墨出し屋は下げ振り、オートレベル、トランシットが出来れば問題なかったのですが、現在ではトータルステーション、レーザー墨出し器、CADなどが使えないと差別化できない状態です。

この傾向はこの先も続いていきます。

BIMのような3DCADも現場に導入されています。

墨出しロボットなども開発されています。杭ナビなどの器械も販売されています。

独立して墨出し屋を続けるなら、テクノロジーに対応していく事がマストです。

 

上級者と上級職長は明確な区別はありません。

墨出しの実力はほぼ同レベルでしょう。

違いとしては、現場を取ってこれる力です。

次の現場を継続して受注する力です。営業活動をしていないのでなかなか新規は取れないと思いますが、紹介などで獲得できたなら、間違いなく上級職長です。

元請から信頼されており、次の現場もあの職長でお願いします、と言われるようでしたら、墨出し屋としては最上級職人です。ここまでくるのに早い人で5年くらい、人によっては10年以上かかるでしょう。

しかしここまできたら、独立してやっていく力は十分ついています。自信を持って大丈夫です。

ちょっと長くなりましたが、以上が独立までのロードマップです。

 

まとめ

初級者は

墨出しの意味を知る

言語をマスターする

どんな作業にどんな墨がいるのか覚える

基本動作のマスター

器械をマスターする

 

中級者ステージは

各作業の注意点を知っている

地縄ができる

光波が使える

座標が使える

斜めの墨が出せる

 

上級者、上級職長ステージは

間違えない方法を確立する。

確認力を高める。

時間配分ができる。

未来を予測する。

円滑なコミュニケーションができる。

テクノロジーに対応できる。

 

独立目指して頑張りましょう。

おつかれさまでした!!

階段墨出し

階段墨出し

 


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階段墨出し

今回は階段の墨出しについて解説していきます。

階段の墨出しは初心者には難しいと思います。

しかし、階段の墨出しは、他業者にはほぼ出せない墨であるため、階段がある現場は必ず墨出しの依頼があります。(RC造のみ)

一日も早くマスターしましょう。経験を沢山積めば難しく感じなくなります。

苦手意識を持ってしまうと、なかなか覚えられなくなります。10年やっても階段の墨出しができない人もいました。親墨出しなどと違って、時間に追われることもないと思いますので、じっくりと腰をすえてやってみてください。

 

階段の墨出しのは何のためにだすのか?

階段の墨出しは、階段の仕上げ面を出します。左官工事で仕上げて、あとは長尺シートをはって仕上がりということが最近は多い気がします。時々、タイルを張る階段もあります。タイルの厚み分を引いて墨出しをしないといけないのですが、基本がわかっていれば、特に問題ないです。

上級者の墨出しである?

一昔前は、階段の墨出しができて一人前なんて言われていました。最近は、あまりそんなことも聞きませんが・・・。といっても、難しく感じる必要はありません。階段の墨出しはこれといった特殊な技術は必要ありません。手順を覚えればいいだけです。親墨出しや、地縄なんかに比べて、神経を使うことも、あまりありません。間違える要素が少ない作業ですね。

でも、油断は禁物です。

チェックポイントは

・平行

・レベルの精度

です。これさえ間違いなければ、大丈夫でしょう。

あと、もう一点

ハツリがでるのは極力さけてください。あまりに躯体が悪い場合は、仕方ないのですが、現場と相談して、ハツリが出そうなときは調整して、ハツリを回避すると考えてください。

 

使用道具

レーザー

スケール

下げ振り

関数電卓

 

手順

【重要】ヒアリングすること

仕上がり、塗代(ぬりしろ)、階高、蹴込(けこみ)

この4点が事前に取得するべき情報です。図面から読み込めるものもあります。

しかし、確認の意味でも現場監督に聞くのがベストです。

階段名称



階高と段数で一段の高さをだす。

では、階段の墨出しを始めましょう。

まず、階高を調べでおきましょう。今回は2階~3階の階段と仮定します。

ここでは2910の階高だとします。

その後、2階の階段フロアーの仕上がり、3階の階段フロアーの仕上がりを監督に確認してください。ここではSL±0を仕上がりにします。

 

そして、塗代(ぬりしろ)を聞きます。躯体からいくつの厚みでモルタルを塗るのか?ということです。20~30くらいが多いと思います。

塗代



図面から蹴込(けこみ)寸法を確認してください。これも、20~30が一番多い寸法です。

 

ここまでの情報は仕入れましたか?

 

できましたら、階高(仕上がり~仕上がり)÷段数の計算をして、一段の高さ(蹴上)をだします。今回は仕上がりはSL±0~SL±0ですので階高は2910。14段の階段だとして

2910÷14=207.857… となります。

 

1,レベルをまわす

2階SL1メートル、3階SL1メートルのレベル墨を出します。階段の作業時には、仕上げ墨出しが終わっている頃なので簡単に階段室に移せるはずです。

そして、踊り場にもレベル墨を出します。

2SL2500返りみたいな、基準レベルの返り墨でも構いません。しかし、可能であれば、踊り場の仕上げ墨の500とか、1メートル返りを出すと後で楽です。

図3を参照

図3 レベル

今回はこの方法で墨出しします。

1段の高さ(207.857…)×7段≒1455 1455+500上がり=1955

上の式で踊り場の仕上がりのレベルが決まります。2SL+1455が仕上がりの高さ。

それから500上がりは1955です。

あらかじめ墨打ちした2SL1000のレベル墨から955を上部にスケールで測り上げます。ポイントを取って、そこにレーザーで踊り場仕上がり500返りの墨をまわしていきます。

 

2、段鼻をだす

レベルを出したら、次は縦墨です。

段鼻を出します。段鼻とは、段の先端の事を指します。今回は塗り代30ミリですので、階段躯体から30ミリのところに縦墨を出します。

図4 段鼻縦墨

この時、躯体の平行を確認します。躯体が、平行なら問題無し、しかし、バチっていたら、階段室側に出ている方の躯体から30ミリを測ります。

平行を測るには、親墨にレーザーを据えます。

レーザーで平行をはかる

ポイントを取ったら、踊り場の高さまで墨を打ちます。

打ったら平行に墨を返します。

今回は踏面は250の幅ですので、

250×6という計算をします。

=1500

スケールで1500返します。1本目の縦墨を踊り場の高さまで伸ばしたのは、このためです。

2本の縦墨を出したら、次の作業に移ります。

段鼻縦墨2本目

 

 

3、ポイントをだす

レベル、段鼻の縦墨を出しました。ここから、ポイントを作成していきます。斜めに打つ墨のポイントです。

 

縦墨上で一段目の踏面のレベルを出します。

今回は1段207.857…なので、先ほど出した、2SL1メーターから、スケールでポイントを付けます。

 

そして、もう一段上の踏面のレベルも出します。このレベルは縦墨上ではなく、蹴込寸法分、離した場所にポイントを取ります。言葉では非常にわかりずらいので、図を参照してください。この図で書いてある赤十字のポイントのことです。

 

1ポイント

一段目の踏面(仕上げ)と段鼻縦墨の交点。

 

2ポイント

2段目踏面(仕上げ)と段鼻より30左側で交点を作る

この30は蹴込寸法と同じ寸法を取ります。

ポイント作り1



このポイントを上り始め側、踊り場側で作ります。

ポイント作り2

 

4,計算をする

 

割り付けるための計算をします。

関数電卓を用意します。

やり方は様々ありますが、1番分かりやすい方法を解説します。この方法が簡単、かつ間違いずらい計算方法です。

 

三角形の斜辺を求める。

 

今回は踏面 250      蹴上(高さ) 207.857...

三角形の底辺と高さがわかっています。

斜辺を出すには、三角関数を使うのですが、関数電卓を使うと一瞬で答えが出ます。

斜辺



POL(一段の幅、一段の高さ)

  (250.    207.837...)

これで、階段一段の斜辺の距離が求める事ができます。その斜辺の距離は自動的に、記録されます。この後の累計寸法を出すのに役立ちます。

距離を求めたら、あとは、その数字を足していく、累計していくのです。

関数電卓 斜辺の出し方

関数電卓 POL機能



その際、スケールに印をつけていきます。割り付けの時使うためです。

 

5,スケールに印をつける

 

関数電卓で先程求めた数値を呼び出します。(ALPHA→X)

まず、その数値をスケールに記録します

次にアンサーボタンを押し、+ボタンを押し、(ALPHA→X)のボタンを押します。

イコール🟰を押すと、累計した寸法が、求められます。

あとは、イコール🟰ボタンを押していけば、累計されていきます。

この数値を、記録すればいいのです。

累計寸法を出す

小数点は、0.5ミリまでを記録します。あまりに細かい数字は意味ないので、四捨五入します。

今回であれば、6回繰り返せば計算は終了です。

計算でだした数値をスケールに記録して、次の作業にかかります。

 

6,距離の確認

階段の登り始めと終わりに作ったポイントを確認します。スケールに累計寸法が印であるので、合うかどうか確認。レベルと縦墨が間違えてなければ、合うはずです。5ミリ以上違う時は、何か問題ありです。レベルが違う、縦墨が曲がっている、計算が違う。この辺りが、一番間違いやすいので確認しましょう。

距離の確認

 

7,斜めの墨をうつ

 

確認が済んだら墨を打ちます。

斜めの墨を打つ



8,割り付ける

打った墨上にスケールを当てて、割り付けポイントを交点にしていきます。

スケールがずれないようしっかりと押さえます。

割り付ける

9,墨打ち

あとは墨を打っていきます。

レベル墨、斜めの墨ともに、伸ばすことになるのでポイントから墨がずれないように気をつけます。少しずれると大きな誤差になる可能性があるからです。

レベル墨打ち

斜め墨打ち(段鼻~蹴込)

これで、階段の墨出しは終了です。解説では片面だけで解説しましたが、実際は2面だします。あと踊り場までの解説でしたが、本番では、折り返して、踊り場から3SLまで、同じことを繰り返します。

時間

階段の墨出しは段取り8割です。レベル、段鼻だし、計算、割り付けポイントの算出

をスムーズに進めることで簡単になります。

30分から40分で墨打ちまで終えることが可能です。でも計算と斜めの距離があわないと確認で時間はかかります。レベルと段鼻出しが最重要ポイントです。

 

まとめ

 

難しいと感じたでしょうか?

階段の墨出しは、技術はあまり必要ありません。やや難しいのは、ポイント、割り付け後の墨打ちぐらいです。これも慣れれば上手くなります。

階段の墨出しは手順がすべてなので、この際覚えてしまいましょう。

今回が基本の型になります。あとは応用していけば、どんな階段の墨出しもできるでしょう。

 

手順おさらい

 

1,仕上げ、塗代をヒアリングする

2,図面から階高、蹴込寸法、踏面の寸法を読み取る

3,三角形をだし、斜め距離を計算しておく

4,斜めの距離の累計寸法をスケールに印を付ける

5,レベルをだす

6,段鼻をだす

7,ポイントを作る

8,ポイント~ポイント間の距離が誤差がないか確認する

9,斜めの墨を打ち、割り付ける

10, 墨を打つ

 

 

墨出しに向く人、向かない人


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なぜ建築の墨出し屋はあまりいないのか?

今日は「なぜ建築の墨出し屋はあまりいないのか」という質問にお答えします。

 

確かに、墨出し屋さんを現場で見かけることはあまりありませんね。大工さんや鉄筋屋さんみたいにずっとその場にいるわけではないため、スポット的にしか現れないことも多いです。

 

単純に、全体の数が少ないという理由があります。

 

墨出し屋の歴史は浅い。墨出しの技術自体は2千年以上前からありますけど。

 

墨出しの専門職となったのは50年くらい前のこと。それまでは、型枠大工や監督が出していたんです。でも、ぶっちゃけると墨出しって面倒くさい。立ったりしゃがんだりig意外に疲れるし。

細かい作業が多いから、じいさんではできないし。そんな中で専門でやる人達が現れたのです。

「本当に墨出しだけで食ってるの!」って当時は驚かれたらしい。いまじゃ当たり前の存在になっているけどね。

 

要するにまだ歴史が浅いから、人数が少ないのはあるよね。

でも、わたし、はこれが最大の理由だと思うのだが、それは「仕事を覚えられない」というものだ。

墨出しの仕事は毎日違う現場に行くもの。よっぽど大きい現場でないと、ずっと同じ現場にいることは少ない。毎日違う現場に行くから、当然、作業内容も毎日違う。

 

これ、新人はなかなか覚えられないよね。

毎日同じことをすることで徐々に仕事って覚えるじゃないですか。でも墨出しは毎日違うことやっているから、同じ作業をもう一回やるころには、忘れてしまうんです。

地縄っていう、現場が始まる前の墨出しがあるのだけれど、これなんか1現場に一回しかないレアな作業なです。。へたすると1年に一回しかないなんてこともある。これじゃ覚えない。ベテランの人でも地縄はできないなんて人も結構いる。

そんでできないと「この間やっただろー」なんて先輩におこられたりする。

 

しかも墨出しは初めから最後までかかわるから覚える知識も幅広い。

嫌になっちゃう気持ちもまあわかるね。

 

では、今回のテーマである墨出しに向いている人、向いていない人を考えていこう。

墨出し屋の一日を見ることが結構ヒントになります。

 

墨出し屋の一日

親墨がある日の1日です。

朝はとにかくはやい。6時から作業開始するから遅くとも4時半には起床しないといけない。

夏でも真っ暗。そんで移動して始めるわけだが、朝からハードな仕事だ。一番気を遣う仕事だからね。親墨は。

9時ごろには出し終わるんだが、結構ぐったりしている。時間は2~4時間だが、追われている作業だから、もちろん休憩はないし、打ち立てのコンクリートは熱をもっていて、夏場なんかはかなり蒸し暑い。体力勝負の面もある。

 

親墨が終わると次の現場に行くことが多い。現場を移動しないと墨出し屋は利益が出しずらいんだ。最高で1日4現場いったこともありますよ。

 

次の現場に到着して、作業開始。内装の仕事をしたりする。

お昼に1時間休憩。朝4時起きだから、昼寝する。寝ておかないと帰りの車の運転がこわい。

16時ごろまでやって終了。朝が早い分少し早めに上がる。残業は滅多にないかな。

この時間になると帰りは渋滞に巻き込まれる。19時から20時ごろやっと家に帰れる。

これを週6日やる。建設業は週休2日なんて夢物語だから、私達はなんとも思わないが、若い人にとってはクソだよね。まあ、これは墨出しの問題ではなく、建設業全体の問題だが・・・。

 

まあ、とにかく朝は早いです。早出も多いので、6時から始まる場合は4時か4時半には起床しなければなりません。通常8時集合でも、車で移動する朝の渋滞がひどいので、早めに家を出て遅刻しないようにする職人が多いです。

遅くとも6時には出発する感じです。朝が弱い人には厳しいですよね。

 

一番の特徴としては、毎日違う現場で働くことが挙げられます。1日の中でも移動して、別の現場に行くことが多く、1日中の作業内容も異なります。刺激的で飽きないのが良いところですが、仕事を覚えるまでの時間が長めです。

わたしの20年近くの墨出し経験の中で、向いている人を以下のように考えています。

  • 飽きっぽい人
  • 自己満足できる人
  • 独立したい人

あなたはどれかに当てはまりますか?どれか一つでも当てはまると、続けていくことができるかもしれません。ひとつずつ説明していきます。

  • 飽きっぽい人

私自身、これに当てはまります。一つの場所で同じ仕事をすることが苦手でした。

墨出しは20年も続いているのですが、同じことの繰り返しではないことが、飽きっぽい私の性格に合っていたのだと思います。

  • 自己満足できる人

この性格を持っている人が実は一番墨出しには向いています。

自己満足できる人とは、自分自身でやりたいことが明確で、そのことに没頭する人を指します。

墨出しの仕事は大工さんなどとは違って、完成した建物には何も残りません。成果物が目に見えず残らないため、完成した喜びはあまりありません。

そのため、自分自身で仕事に対する喜びを見つけた人が強いのだと思います。

誤差がないことを喜ぶ人、美しい墨を見てうっとりする人、習字の先生のような文字を書く人など、自分自身にこだわりを持っている人が大きな喜びを見つけられます。

 

このようにこだわりを持っており、そのこだわりを満たすことが大きな喜びになっている人こそが、墨出しの仕事にぴったりだと思います。まるでオタクのようなものですね。

  • 最後に独立したい人

墨出し屋は独立しやすい職種です。

身体だけで稼げる仕事なので、創業時に必要なものは、レベル、トランジット、レーザー墨出し器など、ごくわずかです。他の業種と比較しても、かなり安い設備投資で独立できます。

車は必要ですが、大きな荷物はないので、安い軽自動車で十分です。

車を除けば、50万円あれば十分です。

機械もレンタルにすれば、ほぼ資金は必要ありません。

雇われたくない、最短で独立したいと思っている人にはぴったりの仕事です。

その後、儲かるかどうかは、その人次第ですがね。

 

 

今度は逆に向いていない人、向いていない性格について話しましょう。

  • 一番向いていない人は、過去をいつまでも引きずるタイプの人です。

墨出しは失敗が許されない仕事ですが、人間だからミスを犯すこともあります。墨出しにはミスがつきものです。

図面の読み間違いや、スケールの出し間違い、聞き間違い、言い間違いなどがあります。

現場は暑い、寒い、うるさいなど、集中力の持続が難しい環境にあるため、100点を取り続けるのは結構至難の業です。経験を積み重ねるうちに、急所がわかってきて、間違いが少なくなります。しかし、経験を積む前に、落ち込みすぎると危険です。

 

墨を出すことが恐怖になって、積極性が失われ、やがて離職することにつながります。ミスしたら、とにかく謝って、素早く対応することです。そしてその晩はゆっくり寝て、次の日には新たな気持ちで現場に向かいましょう。そうでないと、この仕事はやってられません。墨出しに向いている人は、失敗を受け止め、次に活かすことができる人だと思います。

  • 次に妥協してしまう人です。

誤差は積み重なると大きくなります。1ミリぐらいいいやで妥協していると、あとで取り返しがつかない事態に陥ります。

 

あとは確認作業を怠る、妥協すると大変な事態になります。

 

こんな話があります。

捨コンの墨出しで最後の確認を必ずするのですが、確認途中で雨が降ってきました。だんだん強くなってきて、作業着も濡れてきています。図面もふにゃふにゃになってしまいました。

確認作業を急ぐが、ここまで順調で一つも間違いがなかったです。あと一つの柱の確認で終わりというところで、確認をやめてしまいました。ここまで間違ってなかったのだから、大丈夫だろうと、確認作業をそこで中断して、あがってしまったのです。しかし、最後の一つが間違っていたのです。

鉄筋が組まれてから、その間違いに気づき、結局はばらすことになりました。

雨で早く帰りたかったのでしょうが、あと一つ確認すれば、間違いに気づくことができたでしょう。妥協すると、結果は良くないということを忘れずに。これが真実です。

  • ルーティンワークが好きな人

墨出しの仕事は、毎日違う現場に行くことが多く、その1日の中でも作業内容も異なってきます。刺激的で飽きないのが良いところです。だから、ルーティンワークが好きな人は、墨出しの仕事に向いていないかもしれません。ひとつのところでじっくり仕事をしたい人もいます。割とサラリーマンタイプの人です。そういう人には、苦痛かもしれません。

 

 

あなたはどっちでしたか?

 

 

もし向いているなら、いずれ独立を目指すことになるでしょう。

そこで先に独立した先輩として、墨出しで独立するメリット、デメリットを最後に簡単にお話します。

メリット

ずばり、ライバルが少ないことです。

先ほども話したとおり、専業の墨出し屋は歴史が浅いんです。まだまだ足りないです。実際、今は墨出し屋の囲い込みを大手ゼネコンがやっています。

同業者への応援もやるなら、仕事に困ることはまずないでしょう。

 

デメリット

取引先が一社に依存していると危ないです。

墨出し屋は常駐する仕事ではないので、取引先は何社もあったほうがいいです。数多く取引先を持っておかないと、暇になることがあります。そうなると、売上が上がらないし、社員が他に行ってしまう可能性があります。常に新規獲得が必要なことがデメリットです。営業に苦手意識を持っていると厳しいですが、わたしも営業苦手なんですが、1年で30社の新規取引先を獲得したことがあります。

 

それはまた別の機会に紹介しましょう。

 

杭芯出し

杭工事

 


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建築現場での杭芯位置だしの概要

杭芯だしは、建築現場において建物の基礎工事を行う際に不可欠な作業です。

杭芯位置だしの目的は、杭の中心位置を、杭業者が間違えないよう分かり易く明示することです。

杭芯位置だしは、建物の基礎工事を正確かつ安全に行うために非常に重要な作業です。杭芯位置がずれてしまうと、建物の重量に耐えられない弱い場所に杭が建てられる可能性があります。また、正確な位置に杭を建てることで、建物が安定していることを確認することができます。

使用する道具

杭芯位置だしに使用する主な道具には、以下のものがあります。

  • セパレート(リボンテープを巻きます)
  • トータルステーション
  • 人員は2名が基本

杭芯位置だしの方法

杭芯位置だしの方法は、以下のような手順で行われます。

  1. 杭伏せ図を確認し、杭の位置と番号を特定する。
  2. 図面から杭芯の座標を拾う
  3. トータルステーションにその座標を入力する。
  4. 杭の位置に目印となるセパを打ち込む。
  5. これを繰り返す

杭芯位置だしの注意点

杭芯位置だしには、以下のような注意点があります。

  • 座標の計算ミスは絶対にあってはいけなので必ず2回繰り返す。
  • 余裕があれば、他の人にも確認してもらう。(監督だと尚良い)
  • トータルステーションで出した後は、通り芯からの寸法をスケールでも確認する。(まだ地縄で使った杭が残っている事が多いので糸を張って確認すること)
  • 杭は間違えると非常に重大な結果を招くミスのため、面倒くさがらないで必ず確認をする

一番怖いのがヒューマンエラーです。

ここでは一般的なヒューマンエラーの対処法を解説します

ヒューマンエラーを減らすための対策には、以下のような方法があります。

  1. レーニングや教育を受けることで、作業手順やルールを正しく理解し、作業を正しく実施できるようにすることが大切です。                  
  2. 作業手順を標準化することで、手順に従って作業を進めることができ、エラーを減らすことができます。手順書やチェックリストを使用することで、漏れを防ぐことができます。
  3. 自動化技術を導入することで、人間による作業を減らすことができます。例えば、自動化された生産ラインを使用することで、機械が作業を担当することができます。
  4. リスクアセスメントを行い、ヒューマンエラーが発生しやすい作業を特定し、予防策を策定することが大切です。危険な作業は、安全な方法で行うようにすることで、エラーを減らすことができます。
  5. フィードバックを収集し、問題点を特定し、改善策を実施することが重要です。エラーが発生した場合は、その原因を特定し、再発防止策を策定することが大切です。

これらの対策を実施することで、ヒューマンエラーを減らすことができます。しかし、完全にエラーをなくすことはできないため、リスクマネジメントや対応策も併せて検討することが大切です。

これを杭芯位置だしに当てはめます。

必ずやることは自動化です。杭の座標を拾う時は手計算ではなく、CADで杭芯を拾うのが確実です。

次に間違えそうなのはトータルステーションへの座標の入力です。これもPCからデータを直接入力できれば一番いい方法になります。

リスクアセスメントはもうこれでできています。座標計算と入力が一番間違えやすいところだからです。

後は実際トータルステーションを操作する人が、機械をしっかりと据え、自分の位置を後方交会で特定すればもう間違いはありません。スケールでの確認もすれば完璧でしょう。


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耐圧盤上親子墨出し

ステコン墨出しが終了した後、配筋が始まり、耐圧盤を打設していきます。

打設後、耐圧盤上に親子墨出しをしていきます。

耐圧の墨出しの特徴として、配筋が背丈以上に伸びており、やりずらい点にあります。

トランシットの視点が鉄筋にかぶることが多々あり、長手をいかにスムーズに出すかがポイントになってきます。

①目的

耐圧後に、基礎伏せ図に基づいて、型枠立て込み用に子墨出しを行います。

②方法

地縄時に作った逃げが使えればそれを使用して、親墨を出していきます。また、ステコン時に逃げておいた返り墨を使ってもOKです。だたし通り芯は鉄筋に被って使用できないため返り墨で出す必要があります。

短手、長手の十字が出たら、あとは一マスずつ決めていきます。梁を乗り越えることを極力減らすためです。(移動に時間が取られるため)

一マスずつ親、子墨両方出していきましょう。

③道具

  • [ ] トランシット、もしくはトータルステーション
  • [ ] スケール、墨つぼ

④手順

1、まず長手の通り芯を出します。通り芯そのものは出せないので、返り墨で出していきます。ステコン時に矢板等に逃げを出している場合はそれを使ってOKです。ない場合は地縄で作った逃げを使って親墨を出していきます。鉄筋が邪魔することが多々あるため、1M 返りにこだわらずにキリがいい返り墨を使いましょう。

2、短手を出します。両端に出すと後で確認がしやすいです。小さい現場では1本でもいいでしょう。

3、スケールで親墨を返していきます。図面をよく見て1マスずつ返していきます。誤差が積み重なると大きくなるので、1ミリもずらさない気持ちできっちりと返していきます。

4、親墨が出たら、今度は子墨も出していきます。基礎伏せを見て地中梁、柱、フーチンを出していきます。能書きもついでに書いていきましょう。一マスごとに能書きも書いていきます。

⑤量

墨の量は多い方ですが、ステコンほどではありません。

⑥質

型枠の立て込みに使う墨の為、躯体の精度に直結します。100ぎりでポイントを出します。ゼロは使わないように。能書きをたくさん書くので丁寧に、大きく書きましょう。

⑦時間

現場の大きさにもよりますが、2〜3時間ほどで終了すると考えていいでしょう。

親墨(特に長手)をいかにスムーズに出せるかが時間短縮のカギになります。

捨コン上親子墨出し

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 捨コン上親子墨出し

①目的

捨コンを打設したあと基礎、地中梁、柱の位置を出すための墨出しを行います。

本格的な墨出しがスタートします。

基礎の墨出しは間違いが多い作業の一つです。水が出ていたり、捨コンがデコボコしていたり段差が多くあったりとやりずらい環境にあります。また墨の本数もかなりの数になるため、慎重に墨出しする必要があります。

②方法

あらかじめ用意してある逃げを使って、トータルステーションで通り芯をだしていきます。

その後、子墨をだしていきます。

スムーズに通り芯を出せるかがポイントとなります。地縄の際、捨コンを見越してポイントを作成いておくことが重要です。

子墨出しは図面をよくみてください。一見単純そうな寸法が羅列してありますが、すべてが同じ寸法ではないと考えて墨出ししてください。

墨の本数が多いため、かならず最後に全部のチェックをすること!!

 ③道具

- [ ]  トータルステーション
- [ ]  墨ツボ
- [ ]  スプレー (赤→柱 青→フーチン 黄色→地中梁 緑→人通口など)
- [ ]  釘、水糸(水没して墨が打てない時使います。)
- [ ]  レベル

 ④手順

1、まず通り芯をだしていきます。地縄で作ったポイントを使い、トータルステーションで長手をだします。ここはじっくりと時間をかけて確認してください。間違っているとすべてが間違うため、確実に一本通り芯をだしていきます。

2,短手を出します。両端をトータルステーションで出し、あとはスケールで返しても構いません。しかし段差などがある場合はトータルステーションを使い、出していきます。

3、通り芯、梁芯など全て出していきます。ここで能書きを書いておくと混乱せず図面が読めますので、ざっとでもいいので書いておきましょう。

4、通り芯を出した後は子墨を出していきます。

まずは、やりやすいところから。地中梁から出していきます。振り分けを間違えないように気をつけて墨出しをしていきます。

その後はフーチンを出します。フーチンは一段下に位置することが多いため、水がわいていることがほとんどです。あまりに水が溜まっているようでしたら現場サイドにお願いして水替えをしてもらいます。

水替えは時間がかかるため、予め頼んでおきましょう。

次に柱を出します。柱はその後の工事でも特に関連していくところですので、間違えないように!

残りは人通口などを出します。

5、あらかた出し終えた後、スプレーで能書きを書いていきます。

6、その後通り芯のスパン、子墨の確認を確実に行っていきます。全ての墨をチェックします。

7、その他作業として、レベル出し(矢板にレベル墨を打ちます)、杭芯のズレの確認など行っていきます。

 ⑤量

ステコンの墨出しはかなりのボリュームがある作業です。水がわいたりして、やりにくい環境であることが多い作業となります。人員増員するなどして時間内に終われるよう段取りしてください。

⑥質

ステコンの墨出しは基本的には鉄筋の位置が分かれば良いため、多少の誤差はそこまで問題にはなりません。子墨などはスケールのゼロを使ってもいいでしょう。しかし私たちは墨出し屋のため誤差はなるべく出さないという意識は持っていましょう。

 ⑦時間

工程的に一日しか墨出しの時間がないのが普通です。(大現場では2〜3日)

その中でこれだけの作業量をこなすので、人員の手配を考えてください。

通常であれば通り芯だし、レベル出しで2時間程度,子墨出しで3〜4時間程度、確認1時間

その他作業(スプレー吹き、杭芯チェックなど)を目安にしてください。いかに通り芯を丁寧に多く出すかが、その後の子墨出しの時間短縮に大きく関わってきます。

夏場や、水のわき具合によっても作業時間が変化していくため、ステコンの墨出しは、レベルが高い作業であります。ステコン墨出しが時間通り終えることができたのなら、いい職長になったと言えるでしょう。